私は彫刻家だ。
しかも鉄を素材に抽象彫刻を制作する彫刻家だ。
もうかれこれ30年鉄という素材と向き合っている。
鉄をたたくことで得られる反りが作り出す空間を組み合わせ構成する表現と
、 また一方、そういった構成を考えずに鉄に向かう表現とが振り子のように存在していて、
ここ数年はその振り子は後者に大きく振れているように思う。
使う材料の形状や方法は前者よりもさらに単純になっている。
けれども出来上がった作品は逆に饒舌になっている。
「捨てるだけ捨ててしまって、残ったものを表わせ」
この言葉を唯一の手掛かりとして始めた長いながい鉄との旅、
今や接続のためのボルトもなくなって1枚の鉄板をぐるぐる巻きにしていくだけになってしまった。
けれどもこれが自分の表現にとって大事なことに抵触している感覚がある。
その感覚を信じて進むしかない。
今日、ありとあらゆる知識や情報が簡単に手に入るようになった。
そういった状況のなかでの表現の探究は困難を極めることでもある。
私が学んだこの造形哲学は、今日のようなグローバル化した文化状況であるが故に、
これから表現を学ぶ人にとって、自分の立ち位置を見据える手掛かりを与えてくれるのではないかと思っている。
社会的な活動としては,国内的には彫刻家集団NEW HEAVYの代表として精力的に活動を行っている。
国際的には、近年はロシアとの交流を積極的に開始し、
一昨年はロシアペンザ市の彫刻シンポジウムに招待され現地制作を行った。
また神戸大学に彫刻家や研究者を招聘し、日本ロシア芸術交流シンポジウムの開催や、
ペンザ州立大学と交流協定を結ぶなどその交流を深めつつある。
それはロシアが構成主義という造形芸術の重要な概念を生んだ国であり、
その哲学は巡りめぐって私たち日本人の美術に深く入り込んでいると思うからだ。
私たちが西洋から学んだものは何だったのか、何を自分たちのものとしてきたのか、
そして何を発信しようとしているのかを問う時、
構成主義は重要な検討課題であり、そこに21世紀の美術のあり様を見出せるのではないかと考えている。
■略歴
1952 京都府園部町生まれ
1977 京都市立芸術大学彫刻科卒業
1979 京都市立芸術大学彫刻専攻科修了
1980 神戸大学教育学部助手
1988-89 文部省在外研究員
1992 神戸大学教育学部助教授
2002 神戸大学発達科学部教授
現在 NEW HEAVY代表
CAP(芸術と計画会議)メンバー
神戸大学人間発達環境学研究科教授
■展覧会
1979 個展(ギャラリー射手座、京都)
京都市立芸術大学制作展(京都市美術館)
第31回京展(京都市美術館)
1980 スチュワート・ジョセフと二人展(アメリカンセンター、京都)
1981 個展(ギャラリー射手座、京都)
第6回京都美術展(京都府立文化芸術会館)
京都府野外彫刻展(田辺町)
1982 個展(村松画廊、東京)
個展(大阪府立現代美術センター)
京都府野外彫刻展(京都府立植物園)
第5回エンバ賞美術展(エンバ文化ホール、東京/エンバ中国近代美術館、芦屋)
1983 第16回現代日本美術展(東京都美術館、京都市美術館)
個展(ギャラリーCASA、京都)
エンバ賞受賞作家展(サンパル市民ギャラリー、神戸)
第10回現代日本彫刻展(宇部野外彫刻美術館)
1984 アート・ナウ’84(兵庫県立近代美術館)
第9回神戸須磨離宮現代彫刻展(模型作品入選/神戸須磨離宮公園)
京都府野外彫刻展(京都府立植物園)
1985 個展(トアロード画廊、神戸)
第11回現代日本彫刻展(模型作品入選/宇部野外彫刻美術館)
四つの個性展(番画廊、大阪)
三田彫刻コンペティション(兵庫)
1986 三田市城山公園に「地上より」を設置(兵庫)
1987 都市の風景(AXISギャラリー+ギャラリーアネックス、東京)
塚脇淳彫刻展・鍛えられた鉄(札幌彫刻美術館)
1988 個展(ギャラリーテンポラリーT&I、京都)
今村悦美、山本浩二と三人展(ABCギャラリー、大阪)
1989 大月現代アート展(大月真珠、神戸)
1990 第三回美濃加茂彫刻シンポジウム’90(美濃加茂市前平公園)
第12回神戸須磨離宮公園現代彫刻展(模型作品入選/神戸須磨離宮公園)
1991 第7回ヘンリー・ムーア大賞展(模型作品入選/箱根彫刻の森美術館)
WORK IN-BAO芸術祭 in 堅田(大津市堅田)
第14回現代日本彫刻展(模型作品入選/宇部野外彫刻美術館)
STAND AGE(パンテノン多摩、東京)
1992 ’92 兵庫の美術家(兵庫県立近代美術館)
個展(ギャラリーキャプション、岐阜)
第13回神戸須磨離宮公園現代彫刻展(模型作品入選/神戸市役所市民ギャラリー)
1994 芸術祭典・京「京を創る」«三栖閘門プロジェクト»(伏見港公園、京都)
1995 ’95びわこ現代造形展(大津港イベント広場、大津)
個展(ビッグノーズギャラリー、京都)
1996 ダニエラ・ミュアと二人展(l’Aterier de la Balede, Dammard, France)
1997 第1回大堰川野外彫刻展(大堰川緑地公園、京都府八木町)
1998 アーティスト・イン・レジデンス(BEMIS Center for Comtemporary Arts, USA)
第2回大堰川野外彫刻展(大堰川緑地公園、京都府八木町)
住吉石彫シンポジウム(神戸市灘区)
1999 個展(TEMPORARY GALLERY、神戸大学)
第6回六甲アイランド野外展(六甲アイランドマリンパーク南端遊歩道、神戸)
個展(西脇市岡之山美術館)
2000 インターナショナルアートフェスティバル(Busan,KOREA)
個展(関西コンテンポラリーアートラボラトリー・KCAL尼崎/兵庫)
2001 みどりの日(オープンスタジオ/CAP HOUSE, 神戸)
鉄はたたくものだったプロジェクト(ワークショップ/CAP HOUSE、 神戸)
朝来2001野外彫刻展 in 多々良木(兵庫県朝来町)
2002 プサンビエンナーレ・スカルプチャープロジェクト(Busan,KOREA)
杉山知子・塚脇淳ン・藤本由紀夫ドローイング展(CAP HOUSE、 神戸)
2003 越後妻有アートトリエンナーレ(十日町, 新潟)
アートのお買いもの((CAP HOUSE、 神戸)
「From The Earth Project」(西宮市立大谷記念美術館/兵庫)
2004 四人展「直観の十字路」(茶屋町画廊,大阪)
2005 自覚する鉄「NEW HEAVY」展(CAP HOUSE, 神戸)
2005 個展(ぎゃらりーけやき/兵庫三田)
2007 彫刻家の平面展(ギャラリーせいほう,東京)
2009 飛鳥から奈良へ(岡本寺、奈良県明日香村)
PENZA国際彫刻シンポジウム(Penza,RUSSIA)
神戸ビエンナーレ海上アート展(神戸)
2010 「直方で出会う鉄たち」NEW HEAVY in NOGATA(直方谷尾美術館,福岡)
2011 「鉄に挑む熱き男たち 植松奎二+塚脇淳+榎忠」(BBプラザ美術館,神戸)
2011 個展(ギャラリーヤマキファインアート/神戸)
2012 OAP彫刻の小径「閉じることと開くことのあいだに」(大阪)
PENZA国際彫刻シンポジウム(Penza,RUSSIA)
2013 まちなみアート「丹波の圀‟芸術家”展」(兵庫県篠山市「河原町妻入商家群」)
2013 「光の谷に彫刻を立てる」(METAL ART MUSEUM HIKARINOSATO/千葉)
「IN THE FERESTラリーあしやシューレ/神戸)
2014 「飛翔する表現」新収蔵展(西宮市大谷記念美術館)
彫刻を音で見るワークショップ(西宮市大谷記念美術館)
マルニ製油小野研究所に小川和夫・塚脇淳・幸田庄二の共同実験室開設
MARUNI SEIYU+TSUKAWAKI JUN&KOH Collaborated Laboratory since 2014
丹波篠山・まちなみアートフェスティバル 2014(兵庫県篠山市「河原町妻入商家群」)
2015 個展「JUN TAMBA展」/ギャラリーけやき(三田)
第八回PENZA国際彫刻シンポジウム/Penza,RUSSIA
2016 丹波篠山・まちなみアートフェスティバル2016/河原町妻入商家群(兵庫県篠山市)
個展/官洞ギャラリー(韓国,仁川)
KIITO実験展「彫刻と身体による空間の再認識、再検証」/デザイン・クリエイティブセンター神戸
2017 拡がる彫刻 熱き男たちによるドローイング 植松奎二 JUN TAMBA 榎忠 Ⅱ期:JUN TAMBA展/BBプラザ美術館
■受賞歴など
1979 京都市立芸術大学制作展 市長賞
第31回美術懇話会賞受賞(京都市美術館)
1982 第5回エンバ賞美術展優秀賞受賞(エンバ中国美術館)
1985 第1回三田彫刻コンペティション大賞受賞(兵庫県三田)
1987 第3回本郷新賞受賞(札幌彫刻美術館)
1997 兵庫県芸術奨励賞
2001 朝来2001野外彫刻展 IN 多々良木 優秀賞
2003 第32回ブルーメール賞美術部門
■コレクション
京都市立病院
兵庫県三田市城山運動公園
札幌彫刻美術館
株式会社大月真珠
美濃加茂市前平公園
守山市琵琶湖大橋東詰
神戸市東灘区区役所
神戸大学滝川記念会館/BEMIS ART CENTER(USA)
Busanオリンピックスタジアム彫刻公園(KOREA)
LEGEND彫刻公園(RUSSIA)/PENZA州立大学(RUSSIA)
西宮市大谷記念美術館/マルニ製油(株) 小野研究所
METAL ART MUSEUM(千葉)